2015-11-19

空き家対策としての信託の活用

【空き家問題】

最近、『空き家』の増加が社会問題となっているのをご存知ですか?平成25年度の総務省の統計によると、総住宅数の13.5%(820万戸)が空き家となっています。国も本格的に空き家対策に乗り出し、「空き家等対策の推進に関する特別措置法」が平成27年5月26日に全面施行されています。
 空き家となる原因としては、住み替え、介護施設への入居、親の自宅を相続したが既に持ち家がある等が考えられます。

 空き家が放置されると、老朽化した空き家が倒壊するといった防災上の問題、空き家に不法滞在する等の防犯上の問題等が発生し、適正管理されていない空き家があることで周辺地域に多くの弊害をもたらしてしまいます。空き家が倒壊して他人に怪我をさせたりすると、建物の所有者に損害を賠償する責任が生じます。


【空き家予防としての信託の活用事例】 
 所有者が空き家を適正に管理できない場合に備える方法の一つとして、『信託』を利用する方法が考えられます。

 例えば、高齢者の親が身体の不自由のため老人ホームに入居するのに伴って自宅が空き家となるケースを取り上げます。
 将来、所有者である親が認知症により判断能力が衰えてしまうと、自宅の賃貸借契約や売買契約の締結を単独で行うことができなくなります。なお、判断能力の衰えに対応する制度として「成年後見制度」がありますが、信託と成年後見制度との違いは、 信託の概要 をご覧ください。

 高齢者の親(委託者)とその子ども(受託者)との間で、親の自宅を信託財産とする信託契約を締結します。受託者である子どもが自宅の所有者となるため、親に代わって子どもが自宅を賃貸することもできますし、必要に応じて自宅の売却をすることができます。
 ここで注意が必要なのは、家賃収入や売却などによって得た利益を委託者である親が取得するようにしなければ、贈与税の問題が発生する点です。
 また、子どもが信託目的に従って自宅を管理・処分をしているかを受益者の代わりに監督する信託監督人を置くこともできます。


司法書士/AFP  廣濱 翔