2015-07-22

司法書士のお仕事~個人のお客様編③~

 「司法書士って何してるの?」っていうご質問に対する回答の続きです。今回も、縁さん(仮名)の人生に沿って、司法書士がどんなお仕事をしているかご紹介していきます(^。^ )
 ※前回の記事は司法書士のお仕事~個人のお客様編①~
            司法書士のお仕事~個人のお客様編②~ です。


5 成年後見手続き
 縁さんは、最近、物忘れをするようになり、将来の生活が不安になってきました。認知症により判断能力が衰えた場合に、預貯金の管理や介護施設への入所契約等はどうすればいいのでしょうか?

 判断能力が衰えると適正な財産の管理や契約ができなくなります。その場合は、判断能力が衰えた方に代わって財産の管理や契約を行う法律の制度として、(1)法定後見制度と、(2)任意後見制度があります。

 (1)法定後見制度は、判断能力の程度に応じて、成年後見人、保佐人、補助人という本人を保護する方を家庭裁判所に選任してもらいます。本人を保護する候補者を申立書に記載できますが、誰を選任するかは裁判所が最終的に決めます。

 (2)任意後見制度は、お元気なうちに、将来、判断能力が衰えた場合に備えて、あらかじめ自分で後見人を選ぶ制度です。任意後見人になってもらう方と、公証人が作成する公正証書で任意後見契約を締結する必要があります。
 判断能力が衰えた場合は、任意後見人を監督する任意後見監督人を家庭裁判所に選任してもらい、任意後見監督人の監督の下、任意後見人は契約で定めた内容に基づき、本人に代わって、財産管理等を行います。

 縁さんは、まだお元気であったので、今までの信頼関係から司法書士と任意後見契約を締結しました。財産管理や契約を専門家にしてもらえるため、縁さんは安心して老後を過ごすことができます。


6 不動産の相続登記手続き
 ある日、縁さんのお子さんが司法書士事務所を尋ねてきました。そこで、司法書士は縁さんが亡くなったことを知らされました。縁さんが所有していた自宅不動産の名義変更はどうすればいいのでしょうか?
 
 縁さんが遺言書を書いていれば、その遺言書に基づいて、遺産の分配を行います。遺言書がなければ、相続人間で遺産分割について協議をしてもらいます。
 縁さんは、生前、お子さんに自宅不動産を相続させるという公正証書遺言を作成していましたので、司法書士が代理して縁さんからお子さんへの自宅不動産の名義変更を行いました。



  今回で「司法書士のお仕事~個人のお客様編~」は、最終回になります。ご覧いただいたとおり、司法書士はお客様の一生に寄り添って法的手続きをサポートできます。少しでも司法書士のお仕事のイメージができれば嬉しいです。


司法書士 廣濱 翔

2015-07-08

司法書士のお仕事~個人のお客様編②~

 「司法書士って何してるの?」っていうご質問に対する回答の続きです。今回も、縁さん(仮名)の人生に沿って、司法書士がどんなお仕事をしているかご紹介します(^-^ )
 ※前回の記事は司法書士のお仕事~個人のお客様編①~です。


3 債務整理手続き
 縁さんがある日、実家に帰ると、父親宛にサラ金業者から借金の一括払いを請求する督促状が届いていました。父親に借金について問い詰めると、8年前に自営業をしていたときに事業が行き詰ってやむなく借りたもので、事業の廃止や引越しが重なり6年前から返済をしておらず、最近になって督促が来たとのことでした。縁さんの父親はサラ金業者に借金を一括して支払わなければならないのでしょうか?


 6年前から返済をしていないということですので、まず第一に『消滅時効の援用』ができないかを検討する必要があります。「消滅時効」とは、権利を一定期間行使しない場合はその権利を消滅させるという法制度です。サラ金業者からの借金であれば、最終の取引日から5年間、返済をしたり、サラ金業者からの裁判手続き等一定の事由がなければ、『消滅時効の援用』が認められます。

 司法書士の代理権の範囲内であれば、司法書士が代理人としてサラ金業者に『消滅時効の援用』を行います。後日の証拠のために、配達証明付の内容証明郵便で消滅時効を援用するのが一般的です。

 もし、消滅時効の要件に当てはまらない場合は、分割返済の交渉を行う『任意整理』や、借金の返済を免除してもらう『自己破産』等、借金を整理する手続きを行います。



4 住宅ローン完済に伴う抵当権抹消手続き
 縁さんは、30年で組んだ住宅ローンを完済しました。数週間後、住宅ローンを組んでいた銀行から「住宅ローン完済のお知らせ」と「抵当権抹消書類一式」が郵送されてきました。何か縁さんは手続きをする必要があるのでしょうか?


 住宅ローンの長い支払いが終わり、ほっとされたことでしょう。しかし、やるべきことがまだあります。それは、住宅ローンを完済しても、住宅を購入した際に設定した抵当権が自動では消えませんので、ご自宅の不動産を管轄する法務局で『抵当権抹消登記』手続きを行う必要があります。
 もし、抵当権を設定したときの住所・氏名から、現在の住所・氏名が変更になっている場合は、『所有権登記名義人表示変更登記』という手続きもあわせて必要になります。
 司法書士にご依頼いただければ、司法書士が代行して法務局に登記手続きを行います。

 抵当権の抹消登記が完了すると、登記簿の抵当権設定の欄の記載について、下線が引かれます。この下線は抹消された事項であることを意味します。


 少しは司法書士のイメージがついたでしょうか。次回に続きます。



司法書士 廣濱 翔

2015-07-03

司法書士のお仕事~個人のお客様編①~

 「司法書士って何してるの?・・何か法律関係だよね?」っていうご質問をよく受けます。

 司法書士は大まかに言えば、法務局、裁判所や検察庁という役所に関する手続きをサポートするお仕事をしています(司法書士の概括的な内容は、司法書士法人エントラストの業務内容に記載しています)。

 これだけだと、あまりピンとこないと思いますので、数回に分けて、縁さん(仮名)の人生に沿って、司法書士がどんなお仕事をしているかご紹介します(^-^ )


1 マイホーム購入の登記手続きのサポート
 縁さんは、不動産屋さんで気に入った物件を見つけ、マイホームとして購入することにしました。不動産売買契約を締結し、売主に売買代金を支払ったので、不動産を自分の名義にしてもらいます。不動産を自己名義にするためにはどういう手続きをするのでしょう?

 日本では、不動産の権利の変化に関する情報を法務局に備え付けている不動産登記簿に記載して公示しています。
 中古住宅を購入すると、売主から買主へその不動産の名義を変更(所有権移転登記)することになります。建物を新築した場合は、所有者の権利を公示するために所有権保存の登記手続きを行います。また、住宅ローンを借り入れた場合は金融機関が自宅を担保に取るため、抵当権設定の登記手続きを行います。
 これらの不動産の名義変更手続きは法務局に対して行いますが、その代行手続きを司法書士が行います。また、不動産売買の代金決済においては、司法書士が立会い、売主・買主の本人確認や名義変更に必要な書類を確認し、取引の安全を守っています。



2 裁判所の手続きのサポート
 縁さんは、1年ほど前に友人の山田さんに50万円を貸して欲しいと懇願され、やむなく貸しました。しかし、10万円を返済してもらって以来、残りの40万円を返してもらっていません。お金を返してもらう何かいい方法はないでしょうか?

 例えば、友人に貸したお金が返ってこない等、当事者間での話し合いで争いを解決できない場合は裁判所の手続きを利用することが考えられます。裁判所の手続きには、裁判所に間に入ってもらって話し合いを進める「調停」や、裁判所に自分の言い分を認めてもらい判決を取得するための「訴訟」等があります。
 司法書士は、裁判所の書類を作成することによって裁判手続きをサポートをします。また、請求したい金額が140万円以下であれば司法書士が代理人として、当事者の代わりに裁判所の手続きを行います(簡裁訴訟代理等関係業務を行うのに必要な能力を有すると法務大臣が認定した司法書士に限ります)。
 もし、調停や判決を取得後、山田さんがやはり支払いを拒んでいる場合は、お給料や預金等山田さんの財産から強制的に回収する強制執行手続きも裁判所に申立てを行ってすることができます。

司法書士 廣濱 翔